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VPN技術の比較と使い分け

VPN(Virtual Private Network)は、インターネットなどの公衆ネットワーク上に仮想的な専用線を構築する技術です。この記事では、IPsec-VPN、SSL-VPN、IP-VPN、広域Ethernetの違いと使い分けを整理します。

  • インターネットVPN
    • IPsec-VPN: 拠点間接続(Site-to-Site)に利用
    • SSL-VPN: リモートアクセス(クライアント接続)に利用
  • 閉域網VPN
    • IP-VPN(MPLS利用): 企業WAN(L3接続)に利用
    • 広域EthernetVLAN利用): 企業WAN(L2接続)に利用

項目インターネットVPN閉域網VPN
回線インターネット通信事業者の専用網
コスト低い高い
品質ベストエフォートSLAで保証
セキュリティ暗号化で確保網分離で確保
導入期間短い長い

IPsecはネットワーク層(L3)で動作するセキュリティプロトコルです。

プロトコル役割説明
IKE鍵交換SA(セキュリティアソシエーション)の確立
ESP暗号化+認証データの暗号化と改ざん検知(プロトコル番号50)
AH認証のみ改ざん検知のみ(プロトコル番号51)
sequenceDiagram
    participant A as 拠点A
    participant B as 拠点B

    Note over A,B: フェーズ1(ISAKMP SA)
    A->>B: 暗号アルゴリズム提案
    B-->>A: アルゴリズム決定
    A->>B: 鍵交換(DH)
    B-->>A: 鍵交換(DH)
    A->>B: 認証
    B-->>A: 認証
    Note over A,B: ISAKMP SA確立

    Note over A,B: フェーズ2(IPsec SA)
    A->>B: IPsecパラメータ提案
    B-->>A: パラメータ決定
    Note over A,B: IPsec SA確立

    Note over A,B: データ通信開始
    A->>B: 暗号化データ
    B-->>A: 暗号化データ

メインモード vs アグレッシブモード

Section titled “メインモード vs アグレッシブモード”
モードメッセージ交換ID情報セキュリティ用途
メインモード6回暗号化される拠点間接続(固定IP推奨)
アグレッシブモード3回平文で送られるリモートアクセス(動的IP可)

トンネルモード vs トランスポートモード

Section titled “トンネルモード vs トランスポートモード”
  • トンネルモード: 元のIPヘッダごと暗号化し、新しいIPヘッダを付加する。拠点間接続(VPNゲートウェイ間)で使用。
  • トランスポートモード: ペイロードのみ暗号化し、元のIPヘッダはそのまま使用する。エンドツーエンド(ホスト間)で使用。
graph TB
    subgraph original["元のパケット"]
        O_IP["IPヘッダ"]
        O_DATA["データ"]
    end

    subgraph tunnel_pkt["トンネルモード"]
        NEW_IP["新IPヘッダ"]
        ESP_H["ESPヘッダ"]
        ENC1["暗号化部分"]
        T_IP["元IPヘッダ"]
        T_DATA["データ"]
    end

    subgraph transport_pkt["トランスポートモード"]
        TR_IP["IPヘッダ<br/>(そのまま)"]
        ESP_H2["ESPヘッダ"]
        ENC2["暗号化部分"]
        TR_DATA["データ"]
    end

    style NEW_IP fill:#c8e6c9
    style ESP_H fill:#bbdefb
    style ENC1 fill:#ffcdd2
    style T_IP fill:#ffcdd2
    style T_DATA fill:#ffcdd2
    style TR_IP fill:#fff3e0
    style ESP_H2 fill:#bbdefb
    style ENC2 fill:#ffcdd2
    style TR_DATA fill:#ffcdd2

SSL/TLSを利用したVPNで、主にリモートアクセス用途で使用されます。

方式対応アプリクライアント特徴
リバースプロキシWebのみブラウザ導入が最も容易
ポートフォワーディング特定アプリ専用ソフトTCP/UDPアプリ対応
L2フォワーディング全アプリ仮想NICIPsec相当の機能

通信事業者のMPLS網を利用した閉域網VPNです。

graph TB
    subgraph ipvpn["IP-VPN構成"]
        subgraph customer_a["企業A"]
            CE_A1["CE<br/>拠点1"]
            CE_A2["CE<br/>拠点2"]
        end

        subgraph mpls["通信事業者MPLS網"]
            PE1["PE"]
            PE2["PE"]
            PE3["PE"]
            P1["P"]
            P2["P"]
        end

        subgraph customer_b["企業B"]
            CE_B1["CE<br/>拠点1"]
        end
    end

    CE_A1 --> PE1
    CE_A2 --> PE2
    CE_B1 --> PE3
    PE1 --> P1
    PE2 --> P1
    PE1 --> P2
    PE3 --> P2
    P1 <--> P2

    style CE_A1 fill:#e3f2fd
    style CE_A2 fill:#e3f2fd
    style CE_B1 fill:#fff3e0
    style PE1 fill:#c8e6c9
    style PE2 fill:#c8e6c9
    style PE3 fill:#c8e6c9
    style P1 fill:#f3e5f5
    style P2 fill:#f3e5f5
機器役割
CE(Customer Edge)顧客側のルーター
PE(Provider Edge)事業者網の入口ルーター
P(Provider)事業者網内部のルーター
graph TB
    subgraph mpls_label["MPLSによる転送"]
        PKT1["IPパケット"]
        PKT2["ラベル + IPパケット"]
        PKT3["IPパケット"]
    end

    PKT1 -->|"ラベル付与<br/>(Push)"| PKT2
    PKT2 -->|"ラベル除去<br/>(Pop)"| PKT3

    subgraph flow["転送の流れ"]
        CE1["CE"] --> PE_IN["PE<br/>(入口)"]
        PE_IN -->|"ラベルで<br/>高速転送"| P["P"]
        P --> PE_OUT["PE<br/>(出口)"]
        PE_OUT --> CE2["CE"]
    end

    style PKT1 fill:#fff3e0
    style PKT2 fill:#c8e6c9
    style PKT3 fill:#fff3e0

通信事業者のL2網を利用したサービスで、拠点間をL2で接続します。

graph TB
    subgraph wan_eth["広域イーサネット構成"]
        subgraph site1["拠点1"]
            SW1["L2スイッチ"]
        end

        subgraph carrier["通信事業者網"]
            VLAN["VLAN/VPLSで<br/>論理分離"]
        end

        subgraph site2["拠点2"]
            SW2["L2スイッチ"]
        end
    end

    SW1 -->|"同一VLAN"| VLAN
    VLAN -->|"同一VLAN"| SW2

    NOTE["拠点間が同一<br/>ブロードキャスト<br/>ドメイン"]

    style SW1 fill:#e3f2fd
    style SW2 fill:#e3f2fd
    style VLAN fill:#c8e6c9
    style NOTE fill:#fff3e0
項目IP-VPN広域イーサネット
接続レイヤーL3(ネットワーク層)L2(データリンク層)
ルーティング事業者が管理自社で管理
プロトコルIP限定任意(IPX等も可)
拡張性高い中程度
自由度低い高い

GRE(Generic Routing Encapsulation)とIPsecを組み合わせた構成です。

  • マルチキャストパケットを転送可能(OSPFなどの動的ルーティングが使える)
  • IP以外のプロトコルもカプセル化可能
  • これにより、IPsecの「ユニキャスト通信のみ」という制限を克服できる。
graph TB
    subgraph packet["パケット構造"]
        NEW_IP["新IPヘッダ"]
        ESP["ESPヘッダ"]
        GRE["GREヘッダ"]
        ORIG_IP["元IPヘッダ"]
        DATA["データ"]
    end

    subgraph enc["暗号化範囲"]
        ENC["IPsecで暗号化"]
    end

    NEW_IP --> ESP
    ESP --> GRE
    GRE --> ORIG_IP
    ORIG_IP --> DATA

    style NEW_IP fill:#e3f2fd
    style ESP fill:#bbdefb
    style GRE fill:#fff3e0
    style ORIG_IP fill:#ffcdd2
    style DATA fill:#ffcdd2

クラウドサービス向けの通信を、本社データセンターを経由せず直接インターネットへ出す構成です。

従来構成 vs ローカルブレイクアウト

Section titled “従来構成 vs ローカルブレイクアウト”
graph TB
    subgraph traditional["従来構成"]
        B1["拠点"]
        DC1["データセンター"]
        CLOUD1["クラウド"]

        B1 -->|"VPN"| DC1
        DC1 -->|"インターネット"| CLOUD1
    end

    subgraph lbo["ローカルブレイクアウト"]
        B2["拠点"]
        DC2["データセンター"]
        CLOUD2["クラウド"]

        B2 -->|"VPN<br/>社内通信"| DC2
        B2 -->|"直接接続<br/>クラウド向け"| CLOUD2
    end

    style B1 fill:#e3f2fd
    style DC1 fill:#fff3e0
    style CLOUD1 fill:#e8f5e9
    style B2 fill:#e3f2fd
    style DC2 fill:#fff3e0
    style CLOUD2 fill:#e8f5e9

メリット:

  • データセンターの回線負荷軽減
  • クラウドサービスへの遅延低減
  • 回線コストの削減

注意点:

  • 各拠点でのセキュリティ対策が必要
  • 通信経路の可視化が複雑化

graph TB
    START["VPN選定開始"]

    Q1{"通信品質の<br/>保証が必要?"}
    Q2{"L2接続が<br/>必要?"}
    Q3{"拠点間接続?<br/>リモートアクセス?"}

    START --> Q1
    Q1 -->|"はい"| Q2
    Q1 -->|"いいえ"| Q3

    Q2 -->|"はい"| WAN["広域イーサネット"]
    Q2 -->|"いいえ"| IPVPN["IP-VPN"]

    Q3 -->|"拠点間"| IPSEC["IPsec-VPN"]
    Q3 -->|"リモート"| SSL["SSL-VPN"]

    style START fill:#f3e5f5
    style WAN fill:#e8f5e9
    style IPVPN fill:#e8f5e9
    style IPSEC fill:#e3f2fd
    style SSL fill:#e3f2fd

項目IPsec-VPNSSL-VPNIP-VPN広域イーサネット
動作層L3L4-L7L3L2
回線インターネットインターネット閉域網閉域網
コスト
品質ベストエフォートベストエフォートSLA保証SLA保証
主な用途拠点間接続リモートアクセス企業WAN企業WAN
暗号化必須必須オプションオプション

  1. IPsecの動作を理解する

    • フェーズ1でISAKMP SA、フェーズ2でIPsec SAを確立
    • ESPは暗号化+認証、AHは認証のみ
  2. モードの違いを把握する

    • メインモード: 6往復、IDを暗号化、固定IP向け
    • アグレッシブモード: 3往復、IDが平文、動的IP可
  3. 閉域網VPNの使い分け

    • IP-VPN: L3接続、ルーティングは事業者任せ
    • 広域イーサネット: L2接続、自由度が高い
  4. 最新トレンド

    • ローカルブレイクアウトによるクラウド最適化
    • SD-WANとの組み合わせ