レイヤーごとの冗長化技術の整理
ネットワークの可用性を高めるために、各レイヤーで様々な冗長化技術が使われています。この記事では、OSI参照モデルの各層における代表的な冗長化技術を整理します。
冗長化の全体像
Section titled “冗長化の全体像”冗長化の目的
Section titled “冗長化の目的”- 単一障害点(SPOF)の排除
- サービス継続性の確保
- 負荷分散によるパフォーマンス向上
- 機器の二重化
- 経路の多重化
- 自動切り替え(フェイルオーバー)
レイヤー別 冗長化技術マップ
Section titled “レイヤー別 冗長化技術マップ”- L7 アプリケーション層: DNSラウンドロビン, L7ロードバランサー, CDN
- L4 トランスポート層: L4ロードバランサー, セッション維持
- L3 ネットワーク層: VRRP / HSRP, ECMP, 動的ルーティング (OSPF / BGP)
- L2 データリンク層: STP / RSTP, リンクアグリゲーション (LACP), スタック構成, MC-LAG
- L1 物理層: 冗長リンク, 冗長電源, 機器の二重化
L1: 物理層の冗長化
Section titled “L1: 物理層の冗長化”物理層では、ハードウェアそのものの冗長化を行います。
| 技術 | 説明 | 効果 |
|---|---|---|
| 冗長リンク | 複数の物理回線を用意 | 回線障害時の継続運用 |
| 冗長電源 | 複数の電源ユニットを搭載 | 電源障害時の継続運用 |
| UPS | 無停電電源装置 | 停電時の継続運用 |
| コールドスタンバイ | 予備機器を用意 | 機器故障時の交換 |
L2: データリンク層の冗長化
Section titled “L2: データリンク層の冗長化”STP(スパニングツリープロトコル)
Section titled “STP(スパニングツリープロトコル)”L2ネットワークでループを防止しながら冗長経路を確保します。
| プロトコル | 収束時間 | 特徴 |
|---|---|---|
| STP(IEEE 802.1D) | 30〜50秒 | 標準プロトコル |
| RSTP(IEEE 802.1w) | 数秒以内 | 高速収束 |
| MSTP(IEEE 802.1s) | 数秒以内 | VLAN対応 |
リンクアグリゲーション(LACP)
Section titled “リンクアグリゲーション(LACP)”複数の物理リンクを1つの論理リンクとして束ねます。
メリット:
- 帯域幅の増加(例: 1Gbps × 4 = 4Gbps)
- 1本が故障しても残りで通信継続
- 負荷分散による効率化
スタック構成
Section titled “スタック構成”複数のスイッチを論理的に1台として扱います。
MC-LAG(マルチシャーシLAG)
Section titled “MC-LAG(マルチシャーシLAG)”異なる筐体間でリンクアグリゲーションを実現します。
メリット:
- スイッチ障害時も通信継続
- STPを使わずにループフリー
- アクティブ-アクティブ構成
L3: ネットワーク層の冗長化
Section titled “L3: ネットワーク層の冗長化”デフォルトゲートウェイの冗長化を実現します。
| プロトコル | 標準 | 特徴 |
|---|---|---|
| VRRP | RFC 5798 | 標準プロトコル |
| HSRP | Cisco独自 | Cisco機器で使用 |
| GLBP | Cisco独自 | 負荷分散対応 |
ECMP(Equal-Cost Multi-Path)
Section titled “ECMP(Equal-Cost Multi-Path)”同一コストの複数経路で負荷分散します。
特徴:
- 複数経路にトラフィックを分散
- 1経路障害時は残りの経路で継続
- ルーティングプロトコル(OSPF等)と連携
動的ルーティングプロトコル
Section titled “動的ルーティングプロトコル”障害時に自動で経路を再計算します。
| プロトコル | 種別 | 収束速度 | 用途 |
|---|---|---|---|
| OSPF | リンクステート | 高速 | 企業内ネットワーク |
| BGP | パスベクトル | 中程度 | ISP間接続 |
| EIGRP | ハイブリッド | 高速 | Cisco環境 |
L4-L7: 上位層の冗長化
Section titled “L4-L7: 上位層の冗長化”ロードバランサー
Section titled “ロードバランサー”複数のサーバーにトラフィックを分散します。
| 種別 | 判断基準 | 特徴 |
|---|---|---|
| L4 LB | IP/ポート | 高速、シンプル |
| L7 LB | HTTPヘッダ、URL | 柔軟な振り分け |
DNSラウンドロビン
Section titled “DNSラウンドロビン”DNSで複数のIPアドレスを返却して分散します。
注意点:
- ヘルスチェック機能がない
- セッション維持が困難
- 障害検知が遅い
冗長化構成パターン
Section titled “冗長化構成パターン”アクティブ-スタンバイ
Section titled “アクティブ-スタンバイ”特徴:
- 1台がアクティブ、1台が待機
- 障害時にスタンバイが昇格
- リソース効率は50%
アクティブ-アクティブ
Section titled “アクティブ-アクティブ”特徴:
- 両方がトラフィックを処理
- 負荷分散効果あり
- リソース効率が高い
冗長化技術の比較表
Section titled “冗長化技術の比較表”| レイヤー | 技術 | 切替時間 | 構成 |
|---|---|---|---|
| L1 | 冗長電源 | なし | Active-Active |
| L2 | STP | 30〜50秒 | Active-Standby |
| L2 | RSTP | 数秒以内 | Active-Standby |
| L2 | LACP | 即時 | Active-Active |
| L2 | MC-LAG | 即時 | Active-Active |
| L3 | VRRP/HSRP | 3秒程度 | Active-Standby |
| L3 | ECMP | 即時 | Active-Active |
| L4-7 | LB | 設定依存 | どちらも可 |
試験対策のポイント
Section titled “試験対策のポイント”-
各技術の動作原理を理解する
- STPのポート状態遷移
- VRRPのマスター選出方法
-
収束時間を把握する
- STP: 30〜50秒 → RSTP: 数秒
- VRRP: アドバタイズ間隔 × 3
-
構成パターンの使い分け
- Active-Standby: シンプル、確実
- Active-Active: 高効率、複雑
-
レイヤーごとの技術選択
- 冗長化は複数レイヤーで組み合わせる
- 単一レイヤーだけでは不十分